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童貞に筆下ろしを行う先輩


明日香先輩は何も言わない。

僕もまた、羞恥心で固まっていたので、無言の状態だった。


「…………浩くん」

「は、はい!」

顔を上げてから、はじめて、自分が床を見つめていたことに気がついた。

先輩は、いつの間にか体を起こしていて、今はベッドの脇に腰掛けている。

手には先ほどのグラビア本を持っていて、それがまた僕の羞恥心をかき立てた。

「っふふ、そんなに緊張しなくていいよ。ほら、いつまでも立ってないで、こっちにおいで」


先輩に促されるまま、1人分程度の間を開けて、先輩の右側に腰掛ける。

横目で先輩を見ると、長い髪がかかった胸が目に入った。

「浩くん、いいこと教えてあげよっか。……女の人ってね、相手が自分のどこを見てるか、すぐに分かるんだよ」

「え? えええっと、その……!」

思わず胸元から目を上げると、悪戯っぽく笑う先輩の顔が目に入った。


「ふふふ、慌てすぎだよ、浩くん」

「……冗談だったんですか?」

「ううん、さっきのは本当。……浩くんは、おっぱいが大好きなんだね」

「あうっ」

「恥ずかしがらなくってもいいよ。すごい性癖なんていくらでもあるんだから、おっぱい好きなんて普通だよ」

明日香先輩が腕を組むと、自然と胸が持ち上がる。

ブラウスの間から覗く谷間に、僕の目線は自然と吸い込まれた。


「ほら、また。今日で何回目かな」

「……先輩が胸元を開けてるのも悪いんです」

「だって暑くなってきちゃったし。それに浩くん、私が厚着しててもまずおっぱい見るでしょ」

こんな本まで持ってるくらいだし、と手元の本を掲げられて、僕は目を逸らした。

照れてるー、とからかう声が聞こえる。


「けど、あんまり本を真に受けないでほしいかな。フィクションだからって結構無茶な描写もあるし。ほら、こんな体勢とか、どう考えたって苦しいだけだよ」

「ど、堂々と開かないで下さい……」

「そんなにまじまじ見ながら言われても説得力ないよ。……それとも、この本の中身、実践してみたい?」

先輩がこちらを流し目で見ながらブラウスをちらりとめくる。

肌色とは違う、薄い桃色の布地が……!


「浩くん顔真っ赤だよ? りんごみたい」

「い、いや、その……。ぶ、ブラ、ジャーが……」

「へ? ……あちゃ、開けすぎちゃった」

先輩は失敗失敗、と舌を出したけど、服を直す気は無いらしい。

見え隠れする桃色から、僕は目が離せなくなった。


「……私は見えてても大して気にしないけど、そう真剣に見られると恥ずかしいかな」

「っ、す、すいません、つい……!」

「あはは、いいよ。それとも……もっとよく見てみたい?」

「い、いいいえ、その、そんな……!」

まるで、心臓が頭の中に入ってきたみたいに、動悸が耳元で響く。


一瞬遠ざかりかけた意識が、不意に頭を撫でられた感触で戻ってきた。

「よしよし。ごめんね、からかいすぎちゃった。……それにしても、本当に免疫が薄いんだね、浩くんは」

「な、何の免疫ですか……」

頭を冷やしたくて、足元に転がっていたコーラを自分の手で取る。

ペットボトルの蓋を開けて一口飲み……。

「女性経験、って言うかエッチ」

思いっきりむせた。


「っ、げほ、っげほ……! い、いきなり何てこと言うんですか……!」

「そう言う反応するから、余計にそう見えるんだよね。それで、実際どうなの?」

「っ……も、黙秘権を行使したいです」

絞り出すようにそう言うと、先輩は不意に真顔を表す。

「…………。浩くん、それはもう答えみたいなものだよ」

咎めるように、だけど楽しそうに、先輩はくすくすと笑ってそう言った。

「けど、駄目。浩くんの口から直接聞きたいな」


「…………どうしてもですか?」

「言って欲しいな。……もし聞こえなかったら、浩くんはおっぱい星人だって、今度の女子会で言っちゃうかも」

「そ、それは勘弁して下さい……!」

「じゃあ、女性経験……教えてくれる?」


「う、…………。い、いない……です……」

蚊の鳴くような声で言って、僕は顔を隠した。

気恥ずかしくて顔は見れないけど、先輩は間違いなくにやにやと笑っているのだろう。

「……そっか。そっか、そっか」

先輩が不意にこちらに寄ってきた。

重みが1ヶ所に偏って、ベッドのスプリングが音を立てる。


「ラッキーなのかな、アンラッキーなのかな」

「……どう言う意味ですか?」

「今まで浩くんの周りに、浩くんを選ぶ人がいなかったのが。浩くんにとってはもちろんアンラッキーなんだろうけど」

「え? 先輩、それってどういう……」

「浩くん……触ったこと、ある?」

……聞かなくてもわかった。


「え、えっと…………い、いいえ……」

「ふうん……そっか」

先輩はくすりと、どこか妖艶に微笑んだ。

そのままこちらに、しなだれる……っ!

「ね、おねーさんが教えてあげよっか」

耳元でそう囁かれて、一気に鼓動が跳ね上がる。

さっきまでとは違った意味で顔が熱くなった。


「どうしたのかな、浩くん。また、固まっちゃってるよ?」

顔にかかる先輩の吐息。

寄りかかられている左腕からは先輩の温もりと柔らかさが伝わってきて、全身は、それしか感じられなくなった。

「あ、あああの、その……!」

「……本当に慣れてないんだね、浩くん。少しくらいは女の人に慣れておかないと」

左腕を抱きしめるように腕が回され、より密着した体勢になる。

やっとの思いで横を見れば、まつ毛の本数まで数えられそうなくらい、先輩が顔を近づけていた。

「――悪い狼さんに、食べられちゃうよ」


ふるふると動く、赤い唇。

吐息が顔にかかるくらい、いや、それより、もっと近づいて――。


ほんの数秒なのか、何時間もそうしていたのか。

先輩が、僕に口付けをしていた。


唇を触れ合わせるだけの軽いキスだけど、確かな柔らかさと温かさが伝わってきて……、

左腕に集中していたはずの僕の感覚は、いつの間にか自分の唇に移っていた。


す、と離れていった先輩は、自分の唇に手を当てて、ちらりと舌を覗かせる。

「ね、こんな風に」

「…………せ、んぱ、い」


声が震える。

心臓の音がうるさくて、自分の声さえ聞き取れない。

視界もどうにかなってしまったのか、自分の指も、ぼやけて見える。

だけど、聴覚も視覚も、五感全てが明日香先輩を鮮明に捉えていて。

僕のすべての感覚は、先輩の姿を捉えるためだけに使われていた。


「……ど、どうして……」

やっとの思いで声を絞り出すと、先輩は頬を赤らめてはにかんだ。

「浩くんの将来が心配だから、って言うのが半分くらいかな。……からかい甲斐があるんだもん」

だから、私で少しくらい慣れておくといいよ、と、先輩はこちらを覗き込むようにして言った。

「な、慣れるって……そんな……!」


自分の体を大事にしてください、とか。

本当にいいんですか、とか。

心配や興奮や、色々な感情が……ないまぜになって、結局何も言えずにいると、ふ、と先輩は優しげに微笑んだ。


「優しいね、浩くんは。……だから、もう一つ教えてあげる」

「え……と……?」

「君がそう感じるように、私にだって感情があるの。私は、私がしたいと思ったからこうしてる。それを君が気に病むことなんてないよ」

「あ……」

確かに、正直今は自分のことに手一杯で、先輩が何を考えているかなんて分からなかったけど。

……けど、そう言うってことは。

「え、と……先輩、それって、つまり」


おずおずと問いかけると、今度は口を尖らせる先輩。

「君は、女の子に恥をかかせたいのかな」

明日香先輩に捉えられていた僕の左手が持ち上がる。

それは、明日香先輩の首元に導かれ、そっと喉に押し付けられ……、

先輩に触れた指先から、早鐘を打つ鼓動を確かに伝えてきた。


「先輩……で、でも、その」

「浩くん……」

また左手が動かされる。

今度は先輩の口元。僕の唇と触れ合っていた場所へ。

「さっきの続きも、知らないでしょ?」

知りたい?


「んっ……」

2度目の口づけは、さっきよりずっと長かった。

呼吸しようと口を開けると、先輩の舌が代わりに入ってきて。

一瞬の驚きは、押し寄せてきた幸福感で吹き飛ばされた。

「……っ、ふ……ふあ、っふ!……」

「は……ふふ、ん……!」

舌が絡め取られ、なぞられる度に、頭の中がやんわりとスパークする。

先輩の吐息で呼吸して、先輩の唾液を飲むと、快さで何もかもが満たされていくようだった。

この感覚がもっと欲しいと、無我夢中で先輩と唇を合わせ続ける。


「っ……ぷはっ」

息苦しさが限界を迎えて唇を離すと、離れ際に先輩の舌が僕の唇を舐めとっていく。

混ざり合った唾液が、互いの唇をつなぐように橋をかけた。

「……は、あ……。浩くん、飛ばしすぎだよ……」

「はっ、は……は、……すみま、せん……」

「んー、ん。それだけ、気に入って、くれたんでしょ?」

「は……、はい……」


息を切らしながらそう言うと、よかった、と先輩は微笑んだ。

「じゃあ……この先も、気に入ってくれるといいな」

先輩はブラウスのボタンに手をかける。

1つボタンを外す度に白い肌が露わになって、僕の視線は釘付けになった。

先輩の呼吸に合わせて、とても柔らかそうな胸元が上下に揺れている。


「あ、あんまり見られると恥ずかしいかも……」

「っ、ご、ごめんなさい……」

そうは言っても、視線が動かせない。

「……その、先輩の肌が、綺麗だから」

動かない視線の代わりにそう言うと、白い肌に朱が注がれた。


「……そう言うの、他の子には軽々しく言っちゃ駄目だよ」

「せ、先輩にだけです……」

「ありがと。……嬉しい」

そして最後のボタンが解けて……、

衣擦れの音と共に、ブラウスが落ちた。

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